ディスペンサーノズルの常識を覆す異業種への応用
乳がんの患者数は日本のみならず世界的に増え続けています。乳がんの手術による乳房の切除は、患者に肉体的な影響を与えるだけでなく、精神的にも大きな悲しみを与えます。そのような中で、再び胸のふくらみを取り戻すことのできる「乳房再建」の研究開発と普及が急がれています。
ニーズ
導入前の実態・課題
女性らしさ、人間らしさを取り戻す人間社会の心理的欲求
ソリューション
課題の解決策
イノベ―ティブなインプラントの開発と、患者ひとりひとりに合った乳房をつくる3Dプリンティング技術
ポイント
導入決定の理由
精巧な3Dプリンティングを実現するテクダイヤ独自の先端ラップ加工と内部テーパー構造のディスペンサーノズル
リザルト
状況と効果
Bellaseno社(独)にて採用決定。2020年を目途に製造開始予定。
ニーズ導入前の実態・課題

これまでの乳房再建の課題解決

乳房再建手術には、シリコンインプラントを使用した人工物による再建や、患者の弁を使用した自家組織による再建が一般的ですが、それぞれに利点と欠点がありました。シリコンインプラントによる再建では、術後の痛みがほとんどなかったり、再建のために新たな傷を増やす必要がありませんが、本来の乳房のような温かさを感じにくかったり、10年ごとの入れ替えが必要です。一方で、自家組織による再建では、人工物を使う必要はないものの、手術に時間を要したり、乳房以外にも傷痕が残ったりという課題も多く残っています。そこでこれらの課題を解決する第3の乳房再建方法が求められていました。

ソリューション課題の解決策

第3の再建方法となる、体内に吸収されるインプラントの開発と精巧な3Dプリンティング

Ballaseno社(独)では*独自開発した3Dプリンターを用いて新たな再建方法の研究を進めています。材料となるポリマー材を3Dプリンターで精巧に印刷し、インプラントを製造します。

このインプラントを患者自身の体脂肪によって組織形成することで、インプラントはゆっくりと体内に吸収され自然な乳房組織となります。インプラントを永久的に体内に埋め込む必要がないため、長期的な投薬や度重なる手術によるリスクを回避することが可能です。この研究のカギとなる3Dプリンティング。インプラントの材料となるポリマー(ポリカプロラクトン)をディスペンサーノズルから吐出して積み上げていきますが、その構造は非常に精密で複雑なため、小径かつ高精度な塗布が求められます。毎分数百回のスピードで材料を吐出したり止めたりする塗布コントロールが重要になりますが、その際の液垂れと材料詰まりが大きな課題でした。

▼同社開発の乳房再建イメージ

出展:BellaSeno GmbH

*Bellaseno社では、3Dプリンティングの受託生産も行っています。

ポイント導入決定の理由

テクダイヤ独自の先端ラップ加工と内部テーパー構造のディスペンサーノズル

テクダイヤでは、精巧な3Dプリンティングを実行するため、ノズル先端端面を研磨する「先端ラップ」を施しました。端面を平坦にすることで「液垂れ」や「糸引き」といった症状が抑えられます。今回のポリマー材は粘度が低く取り扱いが困難でしたが、テクダイヤ独自の加工技術でBallaseno社(独)の乳房再建に貢献しました。また、流動性を高めて装置信号に呼応して的確に吐出するため、シリンジとノズルの内部を同じ径にすることで150μmという小径ノズルでも材料を安定的に吐出し、お客様の求める3Dプリントを実現することに成功しました。

リザルト状況と効果

他社ディスペンサーノズルと比較し、テクダイヤ製のみがお客様の求める3Dプリントに成功。2020年を目途に製造開始予定。

Ballaseno社の研究は、現在前臨床段階ですが、2020年を目途に自社工場での製造を開始する予定です。小径穴あけ機械加工を得意とするテクダイヤは、先端径30μmまでのディスペンサーノズルをラインナップしています。独自の加工技術により、小径かつ這い上がりは少なく、高い流動性を保持します。精巧な塗布が求められる電子機器の製造工程ではもちろん、バイオマテリアルプリンティングなどの再生医療や宇宙開発など、さまざまな研究機関や企業で採用されています。さらに液体の塗布だけではなく、気体の噴射やチップの吸い上げなど、ディスペンサーノズルの常識を覆し異業界で活用されています。これからもテクダイヤは小径穴あけ機械加工のスペシャリストとして、カスタムノズルはもちろんお客様に最適なソリューションを提案し続けます。

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